


私も保守系のデモに参加した経験がありますが、それでも最高一万人規模でした。大人しい国民性だと思われていた日本人がなりふり構わず反対の声を国会や全国の集会で挙げ、メディアが連日のように抗議していた姿は強烈に焼き付いています。安保法案が可決しましたが、反対派は次なる一手を打つべく行動に移しました。安倍政権にとっては安泰などとは言えない状況は続くものと見ています。
小林節大学教授を始めとする憲法学者を含めた有識者が安保法案の違憲訴訟の訴えを起すようです。
「違憲」訴訟相次ぐ可能性 小林節氏「平和に暮らす権利侵害」100人規模の原告団も sankeinews 2015.9.19 20:24更新
訴訟が起こされても集団的自衛権による損害が確認されていない中で司法が違憲判決を出すのかは疑問ですが、この動きが全国の裁判所で起これば集団的自衛権の発動がしにくくなるのは避けられません。現状では集団的自衛権の行使がすぐに行われる状況ではないだけに解釈だけで法案化する必要はあったのか、堂々と改憲の手続きを踏まえた上で行うべきという保守陣営からの意見もあり、安倍政権としては法案可決しても前途多難であると言えるでしょう。
そして反対派は安保法案に賛成した議員への落選運動を呼び掛けています。この落選運動の効果が国政選挙にどう影響するかは今のところ未知数ですが、名指しされた議員からすれば内心穏やかではないでしょう。安保法案に反対票を投じた野党勢力の動きとしては共産党が他の野党政党に対して選挙における野党共闘を訴えかけています。反デモ活動者から自公政権を倒すために共闘してくれという声に呼応する形での表明ですが、これまで他政党との協力体制など持たなかった共産党としては衝撃的とも言えます。信用ガタ落ちの民主党単体での与党返り咲きは絶望ですから、野党共闘は自公政権を葬り去る唯一の手段と言えます。
とは言え、政策や党方針の違いもあり、すんなり共闘ができるのかは難しいところです、それに野党が束ねてきたところで勝てる訳がない、先の選挙で自公が圧勝しているではないか!という声もあります。確かに直近の国政選挙である2014年の総選挙では自公の圧倒的議席獲得となりましたが、この時の得票数を見てみると意外な結果が出ています。
2014年衆院選・小選挙区で
与党の得票数は、26,226,838票。
野党の得票数は、26,712,951票。
2014年衆議院・比例代表で
与党の得票数は、24, 973,452票。
野党の得票数は、28, 361,295票。
以上のように投票数では野党が上回っています。勿論、野党の中には維新の党や次世代の党のように自民党と政治思想が重なる保守政党も含まれていますので野党共闘したところで現有議席がそのままひっくり返る訳ではありませんが、前回総選挙の投票率は52.66%と戦後最低を記録しています。前々回の政権交代した2012年の総選挙が59.32%とそれまでの最低投票率であることを見れば分かるように、決して国民全体が自民党に期待を寄せている訳ではないのです。自民党には投票したくないが、対抗できる野党がいなかったために棄権にまわった層がいるという裏付けになります。すなわち投票率が伸びれば野党共闘勢力が勝利することも可能となるのです。
安保法制反対という観点では共鳴できなくとも、国民に一番関心のある経済・消費税問題を抱き合わせで争点にするとより選挙での関心が高まります。自民党政権では消費税を下げることは出来ないでしょうから、野党共闘で消費税減税法案を掲げて国民の一番強い関心を持つ経済政策を争点にすれば非常に面白くなります。消費税が景気悪化の際たる原因であることは誰でもわかることなので経済衰退の元凶を争点にすれば自民党も太刀打ちできないでしょう。
安保はともかく、消費税減税・廃止を含めた経済政策を一致させることです。消費税増税の首謀者である民主党がそれを受け入れられるのか?それで野党共闘に賛同できないのであれば自公政権を転覆させるなど無理でしょう。10%消費税増税を確約させた安倍政権に対抗するべく消費税減税・撤廃を掲げる野党連合成功の条件は経済政策の一致にかかっていると言えるのです。
安保法案可決が口火となり来年の参議院選挙を焦点に動き始めた政局は自公政権の終焉の始まりになるか、そうならないか、非常に興味深い流れになりそうです。