
「マクロ経済スライド」方式はこれまでのデフレ経済においては適用される事はありませんでしたが、昨今の物価上昇により制度改革してから10年で初の試みとなるようです。この制度の問題点は将来、賃金や物価が上がった場合でも、年金受給額はそれから毎年0.9%(2025年までは現役世代の減少分を0.6%、平均余命の伸びを0.3%と想定)マイナスした分しか増えなくなります。
@たとえば物価が1.2%上昇した場合
1.2%−0.9%=0.3%・・・・年金は0.3%しか増えない
A物価が0.5%しか上昇しない場合
0.5%−0.9%=マイナス0.4%・・・・改定は行わないので年金は増えない
B物価が0.5%下落した場合
マクロ経済スライド適用は行わないが、通常の物価スライドで0.5%減額される
更にややこしくしているのが年金減額調整といって以前年金を段階的に引き下げていた措置を不況もありしばらく特例措置として引き下げを中断していましたが、平成25年より減額調整することになっており、来年4月は三回目の減額調整を行うことも決まっています。これにより来年4月の年金受給額は前年比と比べて確実に下がる事がお分かり頂けるでしょう。
《年金減額のスケジュール》
@ 1回目の年金減額 (1%減額) 平成25年 10月分
A 2回目の年金減額 (1%減額) 平成26年 4月分
B 3回目の年金減額 (0.5%減額) 平成27年 4月分
このように物価上昇により実質的な年金額は減らされる形となり、我々国民はより一層の節約を強いられる事になるのです。これなら物価上昇などしない方がいいのですが、ご存じのように政府は金融緩和による物価上昇政策を取っているため物価は上がり続け年金受給者の生活はますます厳しくなるのです。それだけではなく現役世代も将来受け取る受給額にも影響するため年金に対する不信感はますます高まってくるでしょう。
私達から集めたなけなしの年金がこういった制度によって物価上昇に見合った支給額を受け取れないというのも非常に問題ありですが、その運用先として株式運用への増額に充てている事も問題です。基本的に株式市場を支えるためだけに年金資金を増やしているので売り抜けなどする訳ないですし、リーマンショックレベルの金融恐慌に見舞われたら年金資金はパーになります。そうなっても誰も年金運用の失敗責任を取る訳もなく、支給額の減額と支給開始年齢の繰り下げと調整を重ねて負担は我々国民に押し付けられるのです。
自公政権によってもたらされたこの仕組みは国民に何一つ利する事などありません。何のための株式運用なのでしょうか?年金積立金を増やすためではなく株価維持だけのために使われるだけ、こんないい加減で出鱈目な制度「マクロ経済スライド」は廃止して物価スライドに応じた年金方式にするよう訴えなければなりませんが、経済政策失敗続きながらも既得権益まみれ財務官僚のいいなりの安倍自民党政権では残念ながら聞く耳など持たないでしょう。来年以降更なる厳しい国民への締め付けが待ち構えているのです。